森のムッレ教室は、5〜6歳児を対象にした自然環境教育プログラムです。スウェーデン野外生活推進協会の事務局長だったヨスタ・フロム氏が開発しました。1957年からはじまり、スウェーデンではこれまでに200万人以上の子どもたちが参加しました。また、フィンランド、ドイツ、ラトビア、ロシア、英国、韓国でも活動が行われています。
森のムッレ教室の目的は、自然から離れてしまった子どもたちをもう一度自然に近づけ、「自然に出かけることは楽しい」ということを知らせることです。自然の中で楽しく遊びながら自然に興味を持ち、自然を好きになる。そして、エコロジーの理解の基盤を築き、自然感覚を育むことを目的にしています。リーダーと、継続的に五感を使って様々な生き物とふれあうことで子どもたちは自然感覚を身につけ、生き物は互いに依存しているというエコロジーの基本を体で学びます。そうすることで一緒に生きている他の生物や環境への気遣いと責任感を育んでいくのです。
*自然感覚は、自然すべての物に気付くことができ注意を払う段階から、「私も動物であり、自然の中のエコロジーの一部なのだ」と理解できる段階まで、幅がありますが、その理解ができて初めて自然に参与でき、自然が自分の家だと思えるのです。だれもが自分の家は大切にします。近所に住んでいるものへの責任も感じるのです。
森のムッレ教室では、子どもの発達に応じて自然感覚を育みます。
森のムッレ教室の最大の特徴は、ムッレという森の妖精が「自然を大切にしよう」というメッセージを持って登場することです。ムッレの語源は、スウェーデン語で土壌を意味する「Mullen」です。土は地球上のすべての命の根源であり、人間もまた土とつながっているのだということを伝えたいという願いがムッレの名前には込められています。ムッレは子どもと自然との橋渡し的存在で、時にはリーダーによる手人形やペープサートで登場し、子どもたちと遊び、歌を歌い、自然について語ってくれます。ファンタジーと現実の世界を自由に行き来できる発達段階にある5〜6歳児にとって、ムッレはスリルがあり想像力をかき立ててくれる存在なのです。森のムッレ教室では、8〜9人に対して2人のリーダーを配置し、子どもたちが自然の中で全感覚を通して概念を築き、自然感覚を育むことをサポートします。
森のムッレは、自然への配慮のシンボルです。小さい頃から自然を大切にすることを学ぶと、人間の自然への影響を意識するようになり、エコロジーの理解の基盤が築かれます。 私たちは、子どもたちに自然と自然に生きている生物全てを感じる感覚を身につけさせたいと思っています。自然感覚の中に、価値観とアイデンティティも含まれます。全ての感覚を使って自分で実体験することが自然感覚を身につけるための基盤だと考えます。
自然は、子どもにとって最高の実験室です。そこには、固い石から柔らかい羽毛のように広い範囲に渡って多様な素材があります。そして、多種多様な形の生物を発見することができます。
全感覚で体験し、収集し、比較し、整理することで自然界のさまざまな物の概念を広めることができます。自分の発見を刺激することで、自然の観察力を磨きます。
どんな天候でも自然の中で快適に過ごすためには、野外生活の知識が必要です。つまり、どのような服装をすれば濡れず、適度に暖かいか、自然に害を与えず、自分も他の人も怪我をしないようにするにはどうすれば良いのかも学ぶのです。森のムッレ教室では、まだ幼いのですが自分の装具を手入れすることも学びます。森や野原で原始的な生活をすることで子どもたちは、人間の原点に触れます。どんな天候でも野外で過ごした体験と冒険は、一生の思い出となり、責任感と自信がつくようになります。